Microsoftがテクノロジーの最先端にいたことは今まで一度もない

MicrosoftLonghornに取り組んでいたころ、AppleはSiamに取り組んでいた。
結果的にまったく正反対の哲学を以って。
Longhornでは根本的な部分を大々的に更新するといわれていた。
事実開発途中のエディションではその片鱗を見ることができた。
が、実際に製品化されるときには肝心要のファイルシステム等が盛り込まれておらず、世界中を落胆させたのだった。
一方その頃AppleはSiamに取り組んでいたが、基幹部分を自前で作ることが難しいとわかるやさっさと諦めてオープンソースFreeBSDをベースにしたもの使う方針に転換した。
そしてAppleが最も重要だと判断したUIを含む利用者が直接接する部分を徹底的に磨くことは一切妥協しなかったわけだ。
両OSが製品化されたあとの顛末は世界中が目撃している。
AppleがPCだけでなく違うカテゴリの製品でも勢力を伸ばしていく傍らで、Microsoftはあらゆるセクターで競合他社(他者)の影に戦々恐々としているような状況だ。


これまでコンピュータの歴史の中でMicrosoftが果たした役割が大きいのは確かだが、しかしMicrosoftがコンピューターテクノロジーの最先端にいたことは一度もない。
一瞬たりとも、無い。
いつも誰か他の開拓者あるいは先駆者が切り開いた道をあとから重戦車で追いかけてきて、進みたい方向に立ち塞がるものがあって邪魔だと思うとそれがその道を切り開いてきたパイオニアであってもお構いなしに粉砕して進もうとする、しかしパイオニアがいなくなると道を切り開くことができず、自分で切り開こうとしてもできず、かと言って退くことは許されず、唯そこに居るだけという状態になる。
”そこまで進軍したという実績”だけが頼みなわけだ。
そうであるからこそMicrosoftにとって過去の製品との互換性を維持することは”後退”しないための必須条件だった。
かくして過去の栄光にすがるだけとも言えるビジネスモデルが定着してしまった。
こんな企業がGeekから嫌われるのは当然だし、領土を守りそこに住む住民から重税を奪っているだけのような仕事ぶりが”帝国”と揶揄されるのもまた当然のことだ。


ネットビジネスの分野でも先駆者にはなれなかった。
最近買収がどうのこうのというのが話題になっているが、話題になり始めて以来の動向をよく見てみると、ここでもまた先駆者を血祭りに上げて自らの道を確保しようとしているようにしか見えない。
MicrosoftのYahoo買収は、単にYahooを潰すことが目的だったらしい。
今年に入って再び大々的に買収提案をしたあと企業乗っ取り屋カール・アイカーンが出てきたが、買収実現にはプラスに働く助っ人が現れたのにMicrosoftはこの動きに反発するような態度をとっていた。
なんだかんだ言って株式の売買を通じてキャピタルゲインを得ることを目的としている以上、アイカーンとしてはYahoo乃至Yahooを買収した企業の企業価値が上がらなければならないのだが、Yahooを潰してYahooに囲い込まれていた顧客を手に入れることが目的だったMicrosoftとしては邪魔で仕方なかったわけだ。
買収でMicrosoftのネット関連事業の業績が向上し結果として株主が利益を得ることができるならほとんどの株主は反対しなかっただろうが、散々苦労して買収して得られるのは”現状維持”でしかない。
こうまでして現状維持のために先駆者を生贄にしても、その先にあるのは更なる停滞だけだ。
そして更なる生贄が必要になる。


要するにネットビジネスの世界におけるMicrosoftは癌だ。
普通に考えると事業から手を引くべきだろう。
ところが本業の先行きがかなり怪しい中で成長著しいネットビジネスという餌を目の前にしたもんだから食いつかずにはいられない、そういうことだろう。
越えてはいけない一線を越えて口にしてはいけない禁断の実を食べちゃった、あーあ食べちゃったどうなっても知らないよ、という感じだ。


しかしまあ、あれだ、世の中はMicrosoftが無くなっても困らない体制が既に整っている。
どうとでもなれ。